中小企業にとって事業計画書の作成が必要な場面というと、融資や補助金申請時などをイメージするのではないでしょうか。融資申請時に提出する事業計画書も大切ですが、そうした場面以外でも、中小企業が事業計画書を作成すると様々なメリットを得ることができるのです。
ここでは、中小企業の経営者向けに事業計画書の概要やメリットについてわかりやすく解説します。事業を成功に導くための事業計画書の作り方についても紹介していますので、事業計画書の作り方を知りたい際の参考としてもお役立てください。
そもそも事業計画書とはどのようなものなのかについて解説します。
事業計画書とは、経営者が事業を成功させるための計画書です。「ビジネスプラン」や「経営計画」と呼ばれることもありますが、より事業についてフォーカスしている計画書をさすことが多いようです。
事業計画書を作る目的には、以下のようなものが挙げられます。
・融資や助成、補助金などの申請時の必要書類として
・事業を効率的に拡大、成長させたい時
・社内外から大きな協力を得たい時
上場している大手企業などが、将来的なビジネスプランを公表して資金調達の手段とするイメージもありますが、シンプルに事業を今より大きく成長させるためのツールとして考えた場合に、中小企業にとっても事業計画の作成は重要であるということがいえるでしょう。
事業計画書の作成は、中小企業庁でも推奨されているものです。中小企業庁のホームページでは、経営者や創業者が自身の夢や志を実現させるためにどうしたらよいか、ということについて記したものが事業計画書であると定義しています。
その事業を行うにあたって必要な人材(ヒト)、サービスや商品(モノ)、必要な資金(カネ)の3つについて「質」と「量」に分けて決定します。それぞれのイメージは以下の通りです。
ヒトの「質」:経験や能力、必要な資格
ヒトの「量」:人数(何人必要となるか)
モノの「質」:商品やサービスのクオリティ、競争性、同業と差別化できるポイントなど
モノの「量」:流通量や規模、保有台数など
カネの「質」:保有資産、調達予定の補助金、融資借入など
カネの「量」:必要な金額
これらのイメージをベースに、更に細かく計画を立てていきます。
上記のイメージをもとに、成功へと繋がる事業計画書の作り方について以下で見ていきましょう。
事業計画書では「ヒト」「モノ」「カネ」を質と量に分けてイメージしていきます。例えば、ヒトの経験や能力、資格などを想定した場合、正社員とアルバイトは何名ずつ必要か、部署や役職などの組織作りなども計画が可能です。現在の従業員と役員数から、今後どの程度増員する予定かを予測することとなります。
モノであれば現時点での流通量や規模、保有台数から現状の課題や改善点を洗い出し、クオリティを保ちつつ生産性を向上させる方法について考えていくこととなるでしょう。
そのために必要なカネは現在保有している資産だけで賄えるのか、補助金や融資申請が必要か、返済が必要な資金の場合、返済計画はどうなるか、といった点も予測が可能となるでしょう。
「夢を叶える」「やりたいことを実現させる」といっても、それが本当に実現可能な計画でなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。
例えば5年先の目標を立てた場合、その目標を実現させるための1年間であり、1年間のための1か月、1か月のための1週間、1日であることが大切です。
その1日が、現在の1日とどの程度違うか、明日からでも実現可能なのか、と考えていく過程が、効果を生む事業計画の作り方において重要となるでしょう。
実現可能な飛躍を叶える計画を立てるためには、自分が本当にやりたいことは何か、ということについて明確にすることも大切です。いくら実現可能な計画を立てたとしても、それが自身の目標から遠ざかってしまっては本末転倒となるでしょう。
無理をしてでも実現させたい事業の未来があるのか、それはどの程度無理をすれば可能性があるのか、何も制限を受けない環境のもとであればどこまでのことがしたいのかなど、少し立ち止まってゆっくり自分自身と対話する時間も必要なのです。
事業計画書の作り方や重要となる考え方がわかったとしても、本当に正しく作れているのか自信が持てない場合もあるでしょう。事業計画書の作り方で迷った場合に試してみるべき方法についても紹介します。
今までに事業計画書を作った経験がない場合、作成したものの精度が高いのか判断するのは難しい場合もあるでしょう。
日々の営業活動の合間を縫って計画書作成に取り組んでいても、コツやポイントがわからないと必要以上に時間がかかってしまうケースも少なくありません。
全体構想や長期的な展望から日々の行動計画まで、効率よくスムーズに作成したいなら、事業計画書の作成について学べる講座などを受講してみるとよいでしょう。
経営者向けに短時間でポイントを押さえた作成方法が受講できるものを選べば、事業の規模拡大や売上増大を計画的に目指せるでしょう。
似たような志を持った経営者が集まる交流会へ参加するのも、事業計画を立てる際にはおすすめの方法の1つです。同業他社や同じような規模の中小企業経営者と交流することで、思わぬ経営のヒントが見つかる場合もあります。
一部の経営塾やセミナーなどでは、講座の終了後に交流会の場が設けられているものもあります。人気の講座を選べば、経営に関する学びと交流の機会を一度に得ることが可能です。
事業計画書では、自身との対話や数年後に実現したい夢といった部分の掘り下げも重要ですが、それを日々の計画へ落とし込む作業も大切です。資金繰りや投入するべき費用などについては、事業計画の支援実績を多く持っている税理士などの専門家へ相談してみるとよいでしょう。
信頼できる専門家からアドバイスをもらうことで、より事業の目標実現を現実的にすることができます。税理士事務所の初回無料相談などを利用する方法があるほか、税理士事務所主催の経営塾などに参加するのもおすすめです。
融資申請のため、または社内での組織作り強化のためなど、目的に応じてもっとも高い効果が期待できる事業計画書の作成サポートが依頼できれば、その後の経営に関するアドバイスも受けやすいでしょう。
事業計画書の作成は、中小規模の企業にとっても効果が高く、経営者の夢を実現するために役立つものです。中小企業庁でも事業計画書の作成は推奨されており、長期的な目標を日々の営業活動に落とし込むことができます。
事業計画書は融資申請時以外にも、社内で組織力を高めたり、事業を建て直す際にも大きな効果が期待できるため、経営塾や交流会への参加、専門家のアドバイスなども検討しつつ、自社にとって本当に必要な計画書を作成することが大切です。