「会社や企業は成長し続けなければならない」という話を耳にすることがあります。会社が成長するのは喜ばしいことではありますが、経営者の中には「現状維持できればいい」「大きな成長は望まない」という考えを持つ人もいることでしょう。そうした場合でも、会社は成長しなければならないものなのでしょうか。
ここでは、会社が成長し続けなければならないとされる理由についてわかりやすく解説しています。経営における素朴な疑問や、今さら人には聞きにくい経営の基礎などについて知りたい際の参考としてお役立てください。
そもそも会社の成長とは、どのような状態をさすのでしょうか。
自己資金の中で売上を出し、経費を抑えて利益性を高めることです。売上がさほど変わっていなくても、利益を増やす企業努力が実った結果といえます。株主などの投資家が企業の成長を見る指標として重視するポイントです。
「1店舗を3店舗に増やす」「出荷数を3倍にする」「ダウンロード○万件を突破する」「新規事業に着手する」など、提供している商品やサービスを拡大することも、会社を成長させる方法の1つです。社会での認知度が高まるため、成長がわかりやすい方法でもあります。
事業や業績が拡大するのと比例して、新しい人材も必要となります。求人を募集して社員が増えていくことも、多くの会社が成長する上で欠かせないポイントとなるでしょう。
前年と比較して売上が伸びている状態です。会社の成長と聞くと、売上の増大をイメージする人は多いといえます。
会社を大きくしたいと考えている経営者がいる一方で、現在の年商や事業規模に満足していて、これ以上の成長を望まない場合や、社員を増やすことに抵抗を感じる経営者がいるのも事実です。経営者が成長させたいと思っていなくても、会社を成長させなければいけない理由があるのでしょうか。
たとえ現在がどのような状態であっても、会社は常に成長させるべきである理由を以下に紹介していきます。
経営について「現状維持で良い」と思っていたとしても、それは現状が未来も続いた場合のみにいえることです。同業他社が必死で成長を続けた場合、会社にとっては現状維持をしていても後退しているのと同じことになってしまいます。
他社が企業努力でより良いサービスを提供すれば、顧客は吸い寄せられるように流れていってしまうでしょう。日進月歩で技術が進化する現代では、常に成長していく気持ちでいなければ、すぐに後退してしまう可能性が高いのです。
例えば、筋トレで努力して腹筋が100回できるようになった時の喜びと、楽に100回腹筋できる時の喜びは異なります。100回に対して「100回もできる」と思うか「100回くらいは楽にできる」と思うかの違いがあるからです。
消費者や顧客にとって、会社のサービスや商品が最初は大きく喜ばれたとしても、時間の経過とともに当たり前となり、有難みは薄くなってしまいます。
顧客の心を掴み続けるためには、売上や事業の拡大に目を向けるだけでなく、現状のサービスをブラッシュアップしたり、埋もれていたニーズを発掘したりする取り組みも必要です。常に顧客満足をかなえて現状を維持するためには、成長を続けなければならないでしょう。
現状維持の会社に勤める社員は、良くも悪くもぬるま湯のような状況で仕事を続けることとなります。「いいことじゃないか」と思いそうですが、成長のない企業が社員にとって必ずしも良いとは限りません。
日々の業務に退屈さを感じ、成長して評価されることを諦めてしまったら、仕事に対する熱意ややりがいを失ってしまう場合もあるでしょう。
「現状維持で良い」という考え方は「手を抜いてもいい」「数字が変わらなければサボっても良い」といった思考へと流れがちです。現状維持を望んだ結果、自然に後退する方向へと舵を切ってしまう可能性が高まります。社会貢献や社員の人間的な成長を促す目的からも、会社自体が成長を続けることが大切なのです。
会社が成長を続けなければならない理由は1つではなく、上記で挙げたうちのいくつかが同時に起こる可能性もあります。スポーツ選手は、筋力やスピード、耐久力やコンディションなど、ベストな状態を維持するために弛まぬ努力をしています。
そもそも現状を維持しようと思うのであれば、現状を維持するための努力が必要であるといえるでしょう。
現状維持を望んだとしても、会社は成長し続けなければならないことがわかったところで、成長のために必要なポイントについて解説します。
会社を成長させ続けるには、事業規模や売上を倍増させたり、社員を倍に増やして多角経営に乗り出したりする以外にもたくさんの方法があります。事業の規模はそのままで、自己資金からより大きく利益が獲得できるような仕組みにするのも成長の1つです。経費の見直しや商品、サービスのモデルチェンジや価格改定を行うなど、既存の顧客満足度を高めることを目標にすると良いでしょう。
誰がやっても良いような業務は極力削減して、社員に任せる裁量権を増やせるようになることも、企業努力の一環です。
責任が伴う専門性の高い仕事に従事できると、社員は働く時間の質が高まったと感じます。質の高い時間を多く持つことは、社員の自信やQOLの向上に役立つでしょう。会社としても、無駄な残業を減らして社員の能力を発揮してもらうことで、効率性のアップや人材育成の恩恵を受けられるでしょう。
店舗数や販売数などが一定の目標に到達したら、必要に応じてスクラップアンドビルドを行うことも大切です。売上の伸びていない店舗を閉店して新規出店する、サービス開始後年数の経過したものは一部リニューアルを行うといった施策を実施します。
顧客からの意見やクレームは積極的に取り入れて改善し、より快適なサービスとなるように努めましょう。
会社の成長を考える時、サービスや社員の成長はもちろん、経営者自身が成長することも忘れてはいけない要素の1つです。
社員と上手にコミュニケーションが取れているか、経営戦略や経営計画はうまく立案できているか、経営理念の作成や経営管理の手法など、忙しくて後回しになっていたスキルを身に付ける機会と捉えることもできます。
経営塾などに参加して専門家から経営の基礎を学んだり、経営者同士との交流を通じて意見交換したりするのもおすすめです。
会社の現在の業績に満足していて特に成長を望まなかったとしても、現状維持するためには常に成長しようとする心がけが大切となります。社員のQOL向上や利益性の追求、スクラップアンドビルドや競合他社の動向チェックなどを行い、経営者が率先して成長しようとすれば、社員のモチベーションにも良い影響があるでしょう。孤独に感じたり、自身の経営手腕に疑問が出てきた場合には、経営塾やセミナーなどを活用して、より良い会社づくりを進めていきましょう。