経営計画書を作る際に書くべき内容や項目は、ある程度決まっています。テンプレートを利用して経営計画書を作成することもできますが、経営の将来設計をより良く描くためには、どのような点を重視して作れば良いのでしょうか。
ここでは、経営計画書のテンプレートを示しつつ、良い計画書にするためのコツやポイントなどについてわかりやすく解説しています。
経営計画書のテンプレートとして記載するべき主な項目について、以下に順番に紹介します。
経営計画書の表紙です。「第○期 経営計画書 ○年○月○日~○年○月○日 株式会社○○」のように、経営計画書の期数や期間と社名を記載します。
経営計画書全体の目次ページです。「経営理念」「自社の強み」など、項目と対応するページ数をまとめます。
経営上で大切にしている考え方やコンセプト、経営に至った経緯などのページです。将来的な展望やミッションなども記載します。ボリュームに応じて「経営理念」「ミッション」などページを分けて書く場合もあります。
1~3年間の経営計画をまとめたページです。売上や経費などの短期利益計画や販売計画について記載します。
短期利益計画では
経常利益
営業外損益
営業利益
人件費や広告費などの固定費
粗利益
仕入
外注費
売上
などの目標を算出します。
販売計画では、利益計画で出した売上と粗利を商品ごとに振り分けていきます。
いずれも表などを作成してまとめるのが一般的です。
商品別の予想売上高や事業成長率、商品ごとの粗利益率や固定費などから、予測できる経常利益を記載します。
前期から当期までの実績と、翌年から5年後までの目標を比較できるように記載していくとわかりやすくなります。
長期経営計画では、10年後までに従業員や支店、商品数や工場、倉庫など、どの程度の規模で経営を広げていくのかの構想をまとめていきます。
前半で理念やミッションについて記載し、後半ではビジョンや長期構想を提示して、中間で短期や中期の事業計画や損益計画、販売計画などを記載する流れとなります。
テンプレートに沿って経営計画書を作る際には、以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
経営計画書の順番としては「短期」「中期」「長期」の順で作成していきますが、計画を考える順番は逆にして、長期経営計画から作成するようにしましょう。
長期経営計画で打ち出した構想を実現させるための中期経営計画であり、短期経営計画では中期の計画を更に細かく割り振っていくようにすると、より現実的な経営計画になります。
短期利益計画や販売計画では、目標とする売上を先に決めるのではなく、利益を先に決めていきます。経常利益から固定費を除して出た粗利から売上目標を設定すれば、事業を存続させるのに必要なお金の流れがわかりやすくなるでしょう。
経営計画書の中でもっとも重要なのは、中期経営計画とされています。しっかりと作られた中期経営計画は、長期的な目標達成の主軸となり、現状の課題を見つけて改善するのに役立ちます。
損益などを現実的な数値に近づけることも大切ですが、経営者のマインドやビジョンを強固にする意味からも、中期経営計画は大切に考えましょう。
経営計画書の作成において、会計の知識はあった方が望ましいですが、一般的な会計ではなく、管理会計の知識を身に付けておいた方が計画書を作りやすいでしょう。
管理会計では、経営を続けるにあたって必要となる費用や資金といったデータから「自社の事業がどのような状況にあるか」を読み解くことが可能です。
対外的に説得力のあるデータとして活用できるだけでなく、社内で将来性や方向性を決める際にも役立ちます。
中期経営計画の作り方や管理会計に関する知識は、忙しい中で自然と身に付けるのは難しいものです。経営塾やセミナーなどで学べる機会を持っておくと、その後の経営計画もスムーズに進めることができるでしょう。
経営計画書を作成することで得られるメリットについて、具体例別に紹介します。
現状の経営状況に問題があり、何とか打開したいと考えている際や、方向性に迷った時などに経営計画が役立ちます。
経営理念やミッション、将来の展望などを再考することで経営者自身の思いが強くなり、損益計画を出すことによって何をすれば良いか、将来の目標達成のために今すぐするべきことが明確になるでしょう。
新規に事業を立ち上げようとする際、どういった点がハードルとなりそうか、そのハードルをクリアするためには何が必要かについて、経営計画を通して行うことができます。
経営者のマインドが前向きで「どんな障害も乗り越えられる」と感じているような場合でも、経営計画書を作ることで思わぬ見落としに気づいたり、よりスムーズに営業活動を行うことができるでしょう。
経営者の思いを従業員へ共有することは、業務に対するやりがいを見出し、個々の達成感や使命感をより実感できるためにも必要です。
「なぜこんな業務をやらなければならないのか」「頑張っても頑張らなくても評価されないのではないか」といった従業員の不満や不安も、将来的な事業の見通しや会社のビジョンが伝われば、理解が得られやすいでしょう。
経営計画の人件費や固定費、売上の状況から、経営者も従業員の日々の働きを再確認することができます。
経営計画書や事業計画書を作成する際は、投資家や金融機関などへの資料として提示することが目的となっているケースも多いでしょう。
先の見通しが明るく、魅力のある事業を経営することは、経営者や従業員だけでなく、融資先や投資先を探している側にとっての幸せでもあるのです。
会社のビジョンや理念をしっかりと掲げることは、求人採用時に会社として欲しい人材へアピールできる良い材料となります。
エントリーする側にとっては、会社を理解する目安となるため、会社の将来像やミッションが明確であることは重要なポイントです。
また、会社側にとっても、事業を広げるにあたり必要な人材はどのような人物かが再確認できることに加え、必要な人材から注目を集めやすいため、お互いにミスマッチが少ないというメリットがあります。
経営計画書に決められたフォーマットがある訳はありませんが、書かれるべき内容は概ね決まっており、テンプレートを利用して作成することも可能です。
しかし、計画を立てる順番を間違えたり、計画書の中で重要とされるポイントを理解していなかったりすると、テンプレートを使用したとしても良い経営計画書にならない可能性もあります。
しっかりとした経営計画書を作ることができれば、社内、社外を問わず、様々なシーンでメリットを得ることが可能です。1人の力で経営計画書を作るのが難しいと感じた場合は、税理士事務所などの専門家が主催する経営塾やセミナーへ参加してみましょう。基本的な知識を最速で身に付けることができる上、経営における重要な考え方なども学ぶことができるでしょう。