「社員が長続きせず、入社した人がすぐ離れていく」「入れ替わりが激しく、残っている社員の負担が大きい」など、社員が長続きしない職場では、経営を広げることも難しくなってしまいます。社員が定着して、モチベーション高く長く働いてもらうために、経営者はどのような点に注意すべきなのでしょうか。
ここでは、人が離れていく悪い社長の例をいくつか紹介し、優秀な人材が残りたいと思う企業にするための方法について解説しています。経営やマネジメントに関する基礎知識としてお役立てください。
社長がどのような振る舞いをしている時に、社員の心は離れてしまうのでしょうか。人が離れていく社長の悪いモデルケースを以下に6つ紹介していきます。
社員に声をかけるのは仕事の話や業務連絡だけで、それ以外のコミュニケーションを取らないタイプの社長です。仕事に対して真面目に取り組んでいる人が取りがちな態度ですが、仕事とは関係のない話や情報交換がない状態では、社員との関係を深めることは難しいでしょう。
「社長は自分に興味がないのだな」「仕事上の駒としか見られていないのでは」と考え、また社長の人となりも伝わらないため「この人のために頑張ろう」という気持ちが育ちにくいでしょう。
熱意を持って仕事に取り組む人は責任感も強く、多くの業務にあたってくれるため社長としては心強い存在です。しかし、だからといって何でも仕事を任せてしまうと、優秀な人の負担が他の社員よりも大きくなってしまいます。
こうした状態を放置していると、優秀な社員はこき使われているように感じ、他の社員は能力を認められていないと思って努力することを諦めてしまう可能性が高いのです。こうなると、社内には仕事をする気のない社員だけが残り、優秀な人材から辞めていく、という事態が起こってしまいます。
「頑張っているがミスも多い」「丁寧に仕事をするが効率が悪い」など、社員のマイナスの部分にとらわれて頑張ったことをあまり評価しない社長も、人が離れていきやすいでしょう。どんなに頑張っても褒めたり評価されたりしないと、社員は「ここにいても自分の能力が認められることはない」「頑張っても無駄なんだ」と考えるようになってしまいます。
企業から人が離れていく原因として、そもそも今必要と思われる人材を採用していない可能性も考えられます。既存の人間関係や忙しくて手が回らない業務は何か、といった点を把握せず、経歴や資格だけを見て採用すると、このようなミスマッチが起きやすくなるでしょう。
何事も率先して自分で決めて進めたいタイプもいれば、与えられた指示に従い行動するのが向いているタイプもいて、そのどちらもが力を発揮して輝いているのが良い組織です。自社にどのような人材が必要か、どのようなスキル、指向を持った人が来ると他の社員が助かるか、という視点で選考する必要があります。
「上司によるパワハラが横行している」「一部の社員だけ不当な扱いを受けている」など、社内で起きている問題にタッチせず、放置している場合も退職者が増える原因となりやすいでしょう。
「社長が出ていくと、ことが大きくなる」「直属の社員に任せているから」といっても、当事者にとっては無視されていると受け止めてしまいかねません。特に尊敬できない振る舞いをしている役職者は放置しないことが大切です。
他者の助言には耳を貸さず、トップダウンで社員の裁量権を認めないワンマン経営の社長です。一見それでうまくいっているように見えても、実際はイエスマンの集まりとなっていたり、社長の力が届く範囲しか事業を拡大できなかったりするでしょう。
社員と社長との間を橋渡ししてくれる優秀な右腕がいて、何とか経営が回っているという場合もあります。優秀な人材にばかり負担がかかる企業となっていて、右腕に万一のことがあった場合のダメージは大きなものとなるでしょう。
どんどん人が離れていく企業から「優秀な人ほど残りたいと思う企業」へと変えるためには、以下の5つを参考にしてみましょう。
これまで仕事以外の話を社員としてこなかったなら、意識して話しやすい雰囲気づくりをしてみましょう。天気の話から入るのでも構いません。体調を気遣ったり、仕事以外の趣味などについて聞いてみたりするのも良いでしょう。仕事上での問題や深刻な悩みなどは、他愛ない会話ができた上でやっと交わされるものです。楽しみも悩みも共有し「この人と一緒に仕事をしたい」と思われる社長の周りには、自然と人が集まってくるでしょう。
優秀な人材は正当に評価され、評価の高い人材が恩恵を受けるシステムになるよう、人事評価体制を見直すようにしてみましょう。年功序列や役職にとらわれず、頑張っている人を応援する企業である、という姿勢を打ち出していくことが大切です。
優秀な人はよりやりがいを持ち、やる気のなかった人もモチベーションが高まるような昇格、昇給評価制度が望ましいでしょう。
採用時の人選ミスをなくすためには、人事に関わる担当者が各部署のニーズを聞き取ることが大切です。求められる人物像のペルソナが作成できれば、採用時のミスマッチをかなり減らすことができます。
経歴や資格、キャリア以外の人柄にも注目し、現在の組織で良い役割を果たせそうかという視点で選んでみましょう。
「うちは従業員が少ないから、わざわざ個別に話を聞かなくても良いだろう」と考えがちですが、たとえ社員が数名しかいなくても、1対1でないと話せないことはあるものです。
定期的に個別面談を行い、改善点や疑問点、提案や希望などについて直接聞き取りする機会を持ちましょう。
お互いの思わぬ勘違いや思い込みなどが解消される可能性や、評価に繋がる考え方や目標達成の方向性を個別に細かくケアできるメリットもあります。「困ったことがあれば、個別面談で話を聞いてもらえる」とわかれば、社員も悩みを1人で抱えることなく、退職を選ぶ前に相談するようになるでしょう。
「最適な人事評価のシステムを作る方法がわからない」「社員と上手にコミュニケーションを取れるようになりたい」「採用面接時に質問するポイントが知りたい」など、知っているようで知らない経営の基礎を学ぶことで、実務がぐっと楽になる場合があります。
経営塾や経営セミナーなどに参加して、経営に関する知識やスキルを学んでみるのもおすすめです。
企業や組織を強くして、息の長い営業活動を行うためには、優秀な人材が残りたいと思う企業にするのが経営者の務めといえます。ワンマン経営やパワハラ、一部の社員の負担ばかりが大きく、正当に評価もされないような風土では、どんどん優秀な人材が離れていってしまうでしょう。
社員と上手にコミュニケーションを取り、必要に応じて評価体制や求人採用時の条件などを見直して、風通しの良い企業にしていきましょう。経営に足りない知識やスキルがあれば、経営塾などへ参加してみるのも1つの方法です。多くの人が能力を発揮できる組織づくりができれば、経営の未来も明るいものとなるでしょう。